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2021.10.11
一次解決率を向上させる8つの方法

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こんにちは。「CallConnect」ライターチームです。

一次解決率は、コールセンターの顧客満足度を左右する重要な要素・必須の指標となります。一次解決率を見るだけで、全体の応対品質や生産性を認識できるため、管理者として必ず把握しておきたい数値です。この記事では、一次解決率の重要性と、具体的な改善方法8つを詳しく解説していきます。

一次解決率とは?

一次解決率とは、コールセンターに顧客が問い合わせた総数に対し、転送やコールバックをせずに「1回の通話で解決した件数の割合」です。通話中に回答できずに折り返し連絡になった場合や、二次対応者や別の部署に転送した場合は、一次解決にはなりません。

 

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この記事では主に顧客満足度の観点から、最も重要な一次解決率について考えていきます。*1

一次解決率を見極めるためのポイントは「解決」の定義です。

本当に解決したかどうかは、顧客がどう感じているかが判断基準であり、把握するのは難しいです。そのため、コールセンター内で「何をもって解決とするか」を定める必要があります。例えば通信サービスに関する問い合わせ窓口は、顧客の疑問に回答できれば解決となります。

一方、工事手配の結果を折り返し連絡するような窓口では、一度の通話だけでは完結できません。このように即時解決が不可能な業務内容の場合は、一度の通話で対応できる範囲を決め、そこまでクリアできれば一次解決とみなせます。

また、新人オペレーターが多い場合には、よりスキルの高いベテランメンバーに転送するのは避けられないため、用件の迅速な把握と転送が必要です。

一次解決率向上の重要性と効果とは?

一次解決率はコールセンターの応対品質と生産性を把握するための重要な指標です。

一次解決率が高ければ、顧客からの問い合わせに対しスムーズに回答できていて、応対品質が高い状態と評価できます。また、1回の顧客対応に関わるオペレーターの人数・時間が少なく、効率的に対応できているといえるでしょう。

一次解決率を集計すると、コールセンターの課題を分析できます。ここからは一次解決率の重要性や改善方法をより具体的にご紹介します。

顧客満足度が向上する

顧客満足度と解決率との間には密接な関係があります。解決率向上の目的は、顧客満足度向上のためです。

顧客満足度には様々な要素が関わってきますが、どれだけスムーズに解決できるかも重要な要素です。

 

例えば、レストランに行った際に注文を聞きに来るのが遅かったり、ホールスタッフが厨房に間違ったオーダーを伝えてしまったとしたら(転送)、最終的に美味しい食事を食べることができたとしても、満足度は下がってしまうでしょう。

つまり、提供するサービスのだけでなく、スピードも重要だということです。

同様に、転送やコールバックといった対応で解決に時間がかかってしまうと、顧客の不満は大きくなる一方、スピーディーに解決できれば高い満足に繋がります。顧客満足度の向上によって、売り上げの向上や解約リスクの軽減といった間接的な効果も期待できるでしょう。

顧客からの問い合わせの解決に時間がかかり、エスカレーション対応が頻繁な場合には顧客満足度が低下しないように、改善策を講じる必要があります。

 

一次解決率が低いのであれば、顧客は以下のような状況に対して不満を抱いている可能性があります。

 

  • 長時間保留にされる
  • 質問に対する適切な回答を得られない
  • 担当者が何度も変わり、その度に説明しなければならない

 

では、この点を裏付ける調査結果を見てみましょう。

 

コールセンターへ問い合わせた際に、オペレーターの回答が正確で速やかだった場合、問い合わせに対する満足度も高いという調査結果があります。正確さとスピードが期待以上だった場合は、「非常に満足している」「満足している」が95%を占めているのに対し、どちらも期待以下だった場合は14.8%まで下がっています。

 

顧客満足度を向上させるためには、問題を的確に把握し解決に導く正確さと、スムーズに解決できるスピードの両方を重視する必要があるといえるでしょう。この2点を同時に達成する指標となるのが「一次解決率」です。

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直近1年間の全体の満足度:オペレーターに繋がってからの回答は正確で速やかだったか

 

そもそもコールセンターに電話をかけてくるお客様は、何かしら要望や、「問題を解決したい」という目的があります。

その目的を達成するのがコールセンターの役割であり、電話してきたお客様の目的が達成されなければ、満足できるはずがありません。

一方で、最初に電話を受けたオペレーターがワンストップで対応を完結できれば、顧客はむしろ満足感を抱きます。このように一次解決率を高めることで、顧客満足度の向上が期待できます。

顧客ロイヤリティが向上し、収益増加が期待できる

顧客が期待以上の商品・サービスに満足し、顧客満足度が向上していくと、愛着=顧客ロイヤルティが向上します。このように、顧客がその企業のファンになっていく結果として、リピート率や継続率が高まります。

特に近年はSNSが普及し、InstagramやTwitterのユーザーによる自発的な口コミがよく見受けられます。このように、顧客ロイヤリティの向上は口コミによる宣伝効果を期待できるため、「収益の増加に繋がる」といえるでしょう。

 

そして顧客ロイヤリティ向上には、直接的に顧客対応を担うコールセンターの働きが重要です。

顧客が企業のファンになり、顧客ロイヤリティが高い状態を維持できれば、解約率の低下、将来的な業績の向上が期待できます。

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一次解決率の連鎖

コスト削減できる

一次解決率が低いと、転送やコールバックのために時間を取られてしまいます。特にコールバックは顧客になかなか繋がらず、何度も連絡しなければならないケースがよくあります。

余計な手間や工数がかかる=コストがかかっているのを忘れるべきではありません。コールセンターに限らず無駄なコストは削るべきであり、一次解決率が低い状態が常態化しているのであれば優先して解消すべきです。

また、一次解決率向上によって、二次対応やオペレーターのフォローにかけていた労力や管理者の負担を削減できます。

一次解決しない方が良いケース

一次対応で解決しようとしない方が良い下記のようなタイプの案件もあります。

 

・クレーム案件

・料金調整など、顧客の希望に添えない案件

 

この二つに関しては、最初に電話を受けたオペレーターが何が何でも一次解決しようとすると、解決しないばかりか、かえって顧客の不満が高まってしまい、オペレーター自身の負担も大きくなってしまいます。

経験上「要望に添えない」という結論が分かっているとしても、あえて一次対応の担当者から時間を空けて折り返しの対応を行うのもテクニックのうちです。

一次対応の担当者が丁寧に話を聞き、共感したり、謝罪したりして、良好な関係を築いているのであれば、たとえ期待通りの結果にならなかったとしても、気持ちの面では落ち着く場合があります。顧客の気持ちを汲み取り、真摯に向き合う姿勢が重要です。

特に、顧客が納得せずに二次対応を希望されている場合は、「管理者に引き継いでも顧客の要望に添えない」と分かっていても、二次対応を断り続けるべきではありません。顧客は「オペレーターではなく、責任ある立場の人に判断してもらいたい」と思っているからです。

二次対応までの間隔を適度に空けて臨むと、顧客の気持ちが落ち着いたり、「社内でしっかりと審議し、考えてもらえた」と感じてもらえたりする場合もあります。

一次解決率を向上させる8つの方法

ここまでの記事で、一次解決が顧客満足度や顧客ロイヤリティ向上のための重要な鍵になることを考えてきました。では、一次解決率を向上させるためには具体的に何をすればいいのでしょうか。ここからは一次解決率を向上させる方法を8つご紹介いたします。

解決率のデータ収集

データ収集の最も簡単な方法は、オペレーターに日々の解決率を報告してもらうという方法です。しかし、各オペレーターの主観に基づいた方法であり、目安程度の簡易的な方法と捉えるべきでしょう。

そもそも解決率は、「顧客が解決したと感じているか」を知ることでより正確な数値を求められます。オペレーターや管理者の主観では本当の解決率を知ることはできません。

そこで、顧客のメールアドレスを登録している通信系の企業では、応対完了後すぐに、顧客宛てにアンケート依頼のメールを送る場合があります。

回答してもらったアンケートのデータは、応対者とリンクしているので、解決率の収集だけでなく、応対品質管理・顧客満足度調査にも活用できます。

しかし、この方法も、すべての顧客が回答してくれるわけではないため、完全なデータではありません。

この方法でKPIの管理をするだけでも相当の労力が必要となるため、現時点のSVの仕事量・負担を考慮し、どの程度の時間を割けるのか、全体的に見てどの程度の比重を置くのが妥当なのかを現実的に考える必要があります。

トークスクリプトの更新・改善

一次解決率向上のための定番の改善策は、顧客応対マニュアルのトークスクリプトの更新です。よくある問い合わせや、新サービスのリリースなどに合わせてトークスクリプトを追加・更新し、オペレーターが顧客からの問い合わせにスムーズに対応できるようにする必要があります。

もし、イレギュラーの問い合わせが多く、現状のマニュアルでは対応できないようであれば、見直す必要があるでしょう。具体的には以下のようなポイントを見極めてトークスクリプトを見直します。

 

  • 予想される質問は他にないか?
  • ヒアリングすべき項目は網羅されているか?
  • 必要な情報は漏れなく含まれているか?
  • 顧客にとって理解しにくい点はないか?

 

特に新人オペレーターが多いのであれば、オペレーター毎の対応のバラつきを抑えることができ、一次解決率の改善に即効性のある最も手軽な方法です。

しかし、いくら作り込まれたトークスクリプトがあっても、オペレーターが十分にマニュアルに精通していなければ、該当の「トークスクリプトまで辿り着けない」といった問題がでてきます。これはマニュアル整備だけでは解決できない問題です。

関連記事:コールセンターのマニュアル作成のポイント 5選

オペレーターの定期研修

前述のとおり、管理者はトークスクリプトの更新以上に、オペレーターの育成に力を入れなければなりません。なぜなら、応対するオペレーターの熟練度が一次解決率に直結するからです。

特にコールセンター立ち上げ時や新人オペレーターの時期は知識が浸透しておらず、経験も少ないため、自信を持って応対するのが困難です。個々のオペレーターに必要な課題を見極め、それをテーマにした定期的な研修、実際の応対を基にしたフィードバックが一次解決率向上の要となります。

新人オペレーターのエスカレーション率の高さは、どのコールセンターでも課題となっていて、対策としては以下のような方法があります。

 

①働く意義や動機を考え直し、モチベーションを向上させる

②音声通話録音から原因を分析し、フィードバックを実施

③ベテランオペレーターとのロールプレイング

 

②のように、特定のオペレーターの一次解決率が低下しているのであれば、録音音源を分析して個別にオペレーター教育をしていきましょう。

関連記事:エスカレーションを効率化するにはどうしたら良い?運用のポイント

専門部署を統合する

ある企業のコールセンターでは、様々なサービスがあるために数多くの専門部署に分かれ、部署間での転送が頻繁に行われており、顧客満足度を下げる要因の一つとなっていました。

そこで、いくつかの専門部署を統合し、総合窓口を設けることにしました。結果的に、総合窓口で一括で承って転送回数を大幅に減らすことができました。

また、窓口自体を統合するのが難しい場合でも、必要な項目を顧客から聞き取るテンプレートを作成し、総合窓口で必要項目をヒアリングして、専門部署に引き継げば、転送率を下げられます。

これは同時に、総合窓口のオペレーターの応対範囲の増加に伴う、必要な知識量・負担の大幅な増加を意味しますので、その労力に見合う報酬が無ければ、離職に繋がるリスクがあります。そのため、統合するのが得策かどうか熟慮する必要があるでしょう。

応対範囲を変更する場合には、段階的な計画について前もって丁寧に説明し、研修時間を確保し、スキルアップに応じた給与制度を設けてモチベーションを維持させる必要があります。

最も大規模な方法ですが、専門部署の閉鎖・縮小に伴って減少するコストを考えれば、取り組む価値は大いにあるでしょう。

転送が避けられない場合でも、顧客の問い合わせの全体像を初期段階で把握しておけば、部署間で再転送するのを防げます。そして、スムーズに転送できるように応対範囲の切り分けを明確にしておく必要もあります。

裁量範囲の拡大

初期の運用ルールは融通が利かず、会社の方針転換を反映していなかったり、判断基準が以前より明確になってきているケースがあります。そこで、運用ルールを見直し、一定の基準を設けてオペレーターに裁量権を与えるなら、解決率を高められます。

リアルモニタリングによる即決

SVによる承認が必要な案件の場合、通常を保留にしてエスカレーションをしたり、二次対応になったりするケースが多いのですが、中には即決可能なケースがあります。

例えば、SVによる承認が必要で、対応が長引いている場合、オペレーターが合図を送り、SVがリアルモニタリングして連携し、通話中に承認・解決できる場合もあります。

少し高度な連携ですが、即決可能なケースをあらかじめ共有しておくことで、一次解決率を上げ、さらに対応時間を短くすることは可能です。

関連記事:コールセンターにおけるモニタリングとは?メリットと実施のポイント

ナレッジ共有

一部の管理者に権限が集中すると、経験で得た知識が共有されなかったり、日々の業務をこなす中で蓄積されたノウハウがマニュアル化されなかったりして、一次解決率の向上を阻んでしまいます。

しかし、オペレーターや管理者向けにナレッジツールを活用して情報共有をすれば、センター全体の運営強化に繋げられるでしょう。

CTIシステムの有効活用

CTIシステムは、コンピューターと電話を連携させるシステムの総称です。CTIシステムを上手に活用すると、一次解決率を改善できます。

例えば、顧客からの入電時に、すぐに顧客情報を参照できずタイムロスが発生すると、顧客のストレスが高まり、その後の対応まで滞る場合さえあります。

しかし、顧客管理システムを活用して早い段階で顧客情報を確認できていれば、顧客自身が問い合わせたい内容をうまく伝えられなくても、オペレーターが過去の応対履歴を見て用件を素早く把握・誘導し、スムーズに対応を進められます。

 

また、一次解決率が低い場合は通話録音機能を利用して分析することができます。IVRによる接続先の設定が適切でない場合は、一次解決率が低下する傾向にありますので、設定を見直して用件毎に適切な窓口に誘導できるように調整しましょう。

しかし、あまりに細かく設定すると、顧客は番号を選択するのが煩わしくなり、適当に番号を押して精度が下がってしまう事態が懸念されます。

繋がる窓口がマッチングしていない事象が多数見受けられる場合は、IVRの見直しが必要でしょう。結局のところ、IVRはシンプルで理解しやすいのがベストです。

関連記事:コールセンターにIVRは必要?導入のメリットやポイントをご紹介

まとめ

この記事を通して、一次解決率は顧客満足度に深く関わっていることや、その数値をどのように改善すればよいか、8つの方法を解説してきました。

オペレーターの定期研修は基本的な方法であり、すぐに取り組める方法もいくつかありました。一次解決率を向上させられれば、顧客満足度・顧客ロイヤリティが向上し、収益の増加も期待できるため、自社に「最適」と思われる方法を試してみてはいかがでしょうか。

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参考文献:リックテレコム社『コンタクトセンター白書2020』

*1:

解決率を考慮する上で、他にも以下のような比率があります。

・1コール解決率

転送やコールバックになったとしても、同じ案件で再度問い合わせされずに、1回の通話(1コール)で解決した比率。

・解決率

最終的に解決した比率

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