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2021.06.03
コールセンターAHT短縮で離職を減らす方とは? 〜スキル向上と環境整備がポイント〜

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こんにちは。「CallConnect」ライターチームです。

コールセンターにおける最重要指標「AHT」を短縮することで、コールセンターは様々なメリットを享受できますが、やり方を間違えるとかえって状況が悪くなり、従業員の離職にもつながってしまいます。

適切にAHTを短縮するためには、どのような施策を実施したらよいのでしょうか?

今回の記事では、AHT短縮のメリットデメリットと具体的な短縮方法をご紹介します。

コールセンターの状況に合った方法を選定し、効率的に短縮するにはどのような施策を講じればいいのか、ぜひ参考にしてください。

AHT(平均処理時間)短縮はなぜ必要?

「AHTは短いほうが良い」とコールセンターの管理者ならご存じのことと思いますが、具体的にどのようなメリットがあるのか、再確認してみましょう。

AHTとは

AHT(Average Handling Time) は「1通話をどの位の時間で処理できたか」を表し、コールセンターの成熟度を示す数値です。平均処理時間とも呼ばれます。

算出の方法は、通話時間、後処理時間、保留時間など、1通話にかかった時間を合計し、応対件数で割ります。

個々のオペレータースキルを確認したり、コールセンターの課題を見つけたり、コールセンター全体の状況を測ることができるので、コールセンターでは最重要とされる指標です。

AHT短縮の必要性

AHTは短ければ短いほど、多くの案件を処理できます。

コールセンターの満足度で最も重要視されている「繋がりやすさ」を達成するには、人員配置も関わってきますが、1通話を短くすることも重要です。

オペレーター1人1人が速い時間で1通話を処理することにより、顧客を待たせすることなく対応できるので、満足度は上がります。

また、パーコール契約(受電件数による契約)の場合は、1人が多くの件数を受電できることにより人件費を抑えられるため、AHTの短縮は直接利益につながるのです。

AHT短縮のメリットとデメリット

AHT短縮にはメリットとデメリットが存在し、ここを理解しないで短縮施策を実行すると思わぬ失敗に繋がってしまいます。

やみくもに短縮施策に走らずに、オペレーターの能力やコールセンターの環境面を考えて実行しましょう。

メリット

先ほども述べた通りAHT短縮のメリットは、繋がりやすさの実現やコスト削減に役立ちますが、その他にも多くの利点があります。

顧客満足度の向上

満足度に影響を与える要因には、「問題解決力」や「製品知識」などがあり、顧客満足度の調査機関であるJ.Dパワーによると「コールセンターでの問題解決や電話対応に要した時間」(25%)、「電話のつながりやすさ」(22%)と、時間に関する影響は50%近くであることが分かりました。

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参照:J.D. パワー 2020年法人向けテクニカルサポートコールセンター満足度調査


短い時間で処理できることは、顧客を待たせない=顧客満足 に直結する要因になります。また、入電時から顧客のフラストレーションが軽減されていることから、そのあとの応対内容にも良い印象を持つ効果があり、全体的な満足度の向上が見込めます。

コスト削減

1通話を600秒で処理できるオペレーターがAHTを10秒短縮できると、1日(8時間勤務)の受電数は約10本増え、50人が達成すれば500本増加し必要なオペレーター数を10人近く減らすことができます。

また、少ない人数でこれまでの入電処理が可能になると、クライアントに追加業務の提案を行うことができ、売り上げを増やすことも期待できるのです。

オペレーター負担の軽減

もともとAHTの短いトップスキルのオペレーターは、ほかのオペレーターと比べ受電が集中し大きな負担がかかっていますが、全体のAHTが短くなれば負担は軽減され、モチベーションが維持されます。

また、短い時間で電話を処理できることはオペレーターの自信に繋がったり、余裕ができたりとメンタル面での効果も期待できます。

デメリット

AHTを短縮するために、無理な施策や計画を立ててしまうと、かえって損失につながる可能性は十分に考えられます。

AHTが長くなる要因は、オペレーターの能力だけが要因ではありません。

コールセンター環境も分析し、SVやオペレーターの努力のみに頼らない、バランスを考えた施策を講じましょう。

品質低下

急いで対応するということは、確認事項の省略や、見直しやチェックツールの使用を怠るなど、今まで丁寧にしていたことを省いてしまうため、誤案内が発生することも考えられます。

また、プラスワンの提案や操作を最後まで案内しなくなるなど、これまで行っていた良いサービスを無くしてしまうと、「不親切」「マニュアル対応」「前はやってくれた」と感じられ、クレームに発展することもあるのです。

離職の要因

短縮の施策がオペレーターの負担になるものばかりになると、オペレーターのモチベーションは低下し、この状態が続くと離職へとつながってしまいます。

タイピングスキルのトレーニングやナレッジの見直しなど、オペレータースキルの向上と環境整備の双方から短縮施策を実施していれば、一時的な負担で済みます。しかし、やみくもに「短くしましょう」とオペレーターやSVに無理を強いるやり方では、混乱を招き不満が増加するのです。

AHTを短縮する具体的な施策

効率的にAHTを短縮するには、現状分析をし、コールセンター環境に合った施策を実行しましょう。

ここからは、AHTを短縮するための具体的な施策をご紹介いたします。

ATT、ACWを分析

まずはコールセンターの現状を正しく分析します。

主にATT(平均通話時間)、ACW(平均後処理時間)をトップスキルのオペレーターと比較し、「どこが伸びてしまっているのか」を見てみましょう。

「通話時間や保留時間に差が出ている」のか、「後処理時間に差が出ている」のかによって施策は異なります。

また、案件別にAHT(平均処理時間)を分析し、特定の内容で伸びてしまっているのかをチェックするのも有効です。

「オペレーターごとに時間が伸びてしまっている案件がバラバラ」であるなら、個別に知識補填が必要ですし、「コールセンター全体で伸びている案件がある」のならば、全体周知やナレッジの見直しで改善が見込めます。

特に、全体的に延伸している案件は、応対フローが正しいのかを確認しましょう。

誰が対応しても時間がかかるということは、見直すべき内容である可能性が高いです。

通話中のオペレーションに問題があるのか、後処理に時間を要する運用になっているのか(例:別のシステムに入力が必要/他部署に連携が必要)を分析し、適正なAHTであればその案件については短縮施策からは除外すべきです。

全てを同じように短縮しようとせず、個人別、案件別に分析をしましょう。

ナレッジの充実

ATT(平均通話時間)を短縮するためには、通話中の回答速度を高める方法が効果的です。

回答を導くことに時間がかかっているということは、資料が見にくかったり探しにくかったりする可能性が考えられるので、ナレッジを見直しましょう。

使いやすいナレッジになっているかどうかは、実際に使用しているオペレーターにヒアリングすると、具体的な改善案が出てきます。

管理者の視点と使用者の視点、双方から見て正確で使いやすいナレッジにすることで、ATTの短縮につながっていくのです。

トークスキル向上

オペレーターごとにATT(平均通話時間)に差があるのなら、トークスキルを向上させることにより短縮が見込めます。

説明が分かりにくく顧客に何度も聞き返されていたり、ヒアリングの方法が悪く必要な情報を聞き出せていなかったりと、トークスキルが起因でATTが延伸している可能性があるので、モニタリングを実施し原因を洗い出しましょう。

また、具体的なトークスクリプトの作成や、スキルの高いオペレーターの音源を聞かせることでも、トークスキル向上に役立ちます。

コールセンターのトークスクリプト作成のポイント 受注率向上編

研修の見直し

AHT(平均処理時間)の短縮には、業務知識の習熟度がかなり重要です。

トップスキルのオペレーターとの差は、ほとんどが知識量の差であり、就業年数に比例しています。

新人オペレーターは経験が浅いのでどうしてもAHTが延伸してしまいますが、そもそも現場で受電させるまでの研修体制は正しいのでしょうか?

座学研修やOJTのプロセスを見直すことにより、新人オペレーターのスキル向上スピードが変わってくることもあります。

コールセンターの研修の進め方。 押さえるべきポイントは?

・座学の期間が長く詰め込み過ぎていないか
・難しい内容を教えていないか
・OJTの指導者に問題は無いか
・定期的に知識補填の研修や面談をしているか
研修体制はAHTの短縮に大きく影響するので一度見直してみましょう。

新人オペレーターの離職率を下げる5つの指導法とは?

社内環境の見直し

AHT(平均処理時間)はコールセンターの環境にも影響を受け、伸びることがあります。

SVの人数やシステムツールのスペック、受電環境の快適さなど、ハード面とソフト面、メンタル面から考えていかなければなりません。

質問できるSVの数が足りないと、保留時間の延伸や折り返し対応により発信の通話時間も増え、AHTは延伸します。

また、ACW(平均後処理時間)の延伸は、オペレーターのスキル向上だけでなく、パソコンそのものや検索ツールが旧式で動きが遅いことが原因かもしれません。

オペレーター同士の席の距離が近い、休憩時間が与えられてないなど、環境面の悪さでモチベーションが落ちている可能性もあるため、コールセンター環境の改善にも努めましょう。

KPIの見直し

そもそも、目標とするAHTは適正でしょうか?

KPIは、時間の経過により状況が著しく変化している場合、再検討が必要なこともあります。

当初よりも案内すべき内容が増えていたり、運用の複雑化や入電数が増加していたりと、状況が変わっているにもかかわらずKPIを据え置いているのであれば、短縮は困難です。

無理な目標をSVやオペレーターに追わせるのではなく、状況に応じて適正値を設定するよう心がけましょう。

AHTを短縮すれば生産性が向上し離職率も低下

AHT(平均処理時間)の短縮は、顧客満足度の向上やコスト削減の効果もあります。正しい施策を講じれば生産性が上がり、SVやオペレーターのES向上にも役立ちます。

また、AHTが延伸している理由を管理面とオペレーション面双方から考え、コールセンター環境を良くしていくことは、離職防止にも効果的です。

ただ単に処理効率を上げることだけを考えず、コールセンター全体の環境や状況を分析し、顧客満足と従業員満足ともに向上させ、健全なコールセンターづくりを目指しましょう。

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