新年度を迎える際、より良いカスタマーサポートを提供するために目標や指標を見直したいと考えている管理者の方も多いのではないでしょうか?
しかし、カスタマーサポートやコールセンターの指標は種類が多く、会社独自のものを含めると100を超える数があると言われています。そのため、「何から考えれば良いのか分からない…」という方も多いはずです。
そこでこの記事では、カスタマーサポートや電話対応において重視すべきKPIをご紹介します。最後まで読めば、業界で重要視されている指標がどんなものかが理解でき、自社の「最終目的の達成」に近づく指標についてイメージがわくはずです。
カスタマーサポートで重視すべき4つの指標
カスタマーサポートで重視すべき指標は、以下の4つです。
・解決率
・解決時間
・顧客満足度
応答時間
応答時間とは、顧客からの着信に対し、応答するまでに要した時間のことです。顧客にとってはオペレーターに繋がるまでの「待ち時間」であり、満足度と密接に関係するため、多くのカスタマーサポート部門が指標にしています。
例えば、2022年にJ.D. パワー ジャパンが金融機関のカスタマーセンターを対象に行った調査によると、電話や有人チャットにおいてオペレーターとやりとりを開始するまでの待ち時間が「3分」を超えると、顧客満足度が大きく低下する傾向が見られました。
また、カスタマーサポートツール「Tayori(タヨリ)」が2018年に行った調査では、お問い合わせフォームを利用した顧客の70.5%は、応答時間が「24時間」を超えると我慢の限界を迎えると回答しています。
このようにカスタマーサポートの評価を大きく左右する応答時間は、以下のような指標を定めて継続的に評価しましょう。
・一次応答時間:顧客からの問い合わせに対して最初に応答するまでの時間
・平均応答時間(通称ASA、Average Speed of Answer):顧客からの問い合わせに対して応答するまでの平均時間。「応答時間の合計÷問い合わせ数×100」で算出する
参考:カスタマーサポートにおける応答時間の目安と短縮方法を解説
解決率
解決率とは、問い合わせの数に対して解決できた件数の割合。「解決数÷問い合わせ数×100」で算出します。
顧客が抱える問題の解決はカスタマーサポートの最大のミッションであり、最重視すべき指標と言えるでしょう。
2022年にトランスコスモスが実施した調査によると、カスタマーサポートの利用におけるストレスの要因は、待ち時間の長さに次いで「問い合わせしたが解決しなかった」でした。
解決したかどうかの判断は顧客の主観であり曖昧なため、カスタマーサポートの中で「解決」の定義を明確にし、定量的に測定できるようにしましょう。他部署へのエスカレーションや書類のやり取りなどが必要で即時解決できない業務内容の場合、「一回の電話やメールで解決できる範囲」を決め、解決扱いとするケースもあります。
解決時間
解決時間とは、問い合わせを受けてから解決するまでの総時間です。
例えば、受信したメールに一次返信をしてから、その数時間後に正式な回答をした場合、顧客が待っていた時間も「解決時間」に含まれます。
解決時間が指標として重視される理由は、問題を適切に捉える”正確さ”と、短時間で解決に導く”スピード”の双方をチェックできるからです。
リックテレコムの「コンタクトセンター白書2020」では、オペレーターの回答が”正確”で”スピーディ”だった場合に満足する顧客は95%なのに対し、いずれかが期待値を下回っていると、満足度は32.7ptダウンして62.3%になることが分っています。つまり、正確さとスピードは、カスタマーサポートにおける両輪と言えるのです。
解決時間を短縮するには、以下のような数値も確認し、時間を要している原因を明らかにしましょう。
・一次解決率:問い合わせの全件数に対し、エスカレーションや折り返しをせずに一度の通話で問題解決した件数の割合
・エスカレーション回数:問い合わせを受けたオペレーターで解決できず、エスカレーションをした回数
カスタマーサポートの対応への顧客満足度(CSAT)
CSAT(Customer Satisfaction)とは、製品やサービスに対する顧客の満足度を数値化したものです。カスタマーサポートの応対が顧客の期待に応えているのかを確認するために必要な指標です。
CSATの測定方法に決まった形式はなく、測定のタイミングも任意です。カスタマーサポートで一般的なのは、対応を終えた顧客に対してアンケートを配信し、今回の応対内容について「非常に満足」・「満足」・「普通」・「不満」・「非常に不満」の5段階で評価してもらった結果を数値化する方法です。
CSATと混同されがちな指標に、「NPS®(Net Promoter Score)」があります。
NPS®が数値化するのは、長期的な視点の「顧客ロイヤルティ」。CSATが”今回受けた応対内容”といった短期的な満足度を測るのに対し、NPSは”製品やサービスを継続して利用するか否か”といった企業に対する「信頼」や「愛着」を数値化します。
NPSについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
▶コールセンターにおけるNPS®の重要性と実施する際に注意すべきポイント - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)
それぞれの特性を理解し、目的に合った指標を設定するようにしましょう。
インバウンドのコールセンターで重視すべき指標
ここからは問い合わせのチャネルを「電話」に絞り、顧客からかかってきた電話を対応するインバウンドのコールセンターで特に重視すべき指標を4つご紹介します。
・SL(サービスレベル)
・処理時間
・モニタリングスコア
応答率
数ある指標の中でも、多くのコールセンターで最も重視されているのが応答率です。
2020年のリックテレコムの調査では、45%のコールセンターが応答率を最重視していると回答しています。
参考:株式会社リックテレコム 月刊コールセンタージャパン編集部「コールセンター白書2020」P.75
応答率とは、着信に対してオペレーターが実際に対応できた件数の割合であり、以下の式で算出されます。
応答率(%)=対応件数÷着信件数×100
顧客満足度と密接に関係する「窓口のつながりやすさ」を表す指標なので、自社の適正値を見定め、日々数値をチェックしましょう。
応答率の改善方法については、以下の記事を参考にしてください。
▶コールセンターの応答率はなぜ重要?改善方法や注意点を解説 - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)
SL(サービスレベル)
SL(サービスレベル)とは、あらかじめ設定した時間内にオペレーターが応答できた件数の割合のこと。一般的に、「着信から20秒以内に80%の電話をとる」ことがSLの基準といわれています。
SLの算出方法は、以下のとおりです。
設定時間内の応答件数÷着信件数×100
応答率と同じく「窓口のつながりやすさ」を表しますが、顧客の待ち時間を考慮している点でSLは一歩踏み込んだ指標と言えます。仮に応答率が100%でも、待ち時間が長ければSLは低く、顧客にストレスを与えている状況です。
SLが低い場合は、オペレーターの配置や次項でご紹介する「処理時間」を確認し、どこに問題があるのかを探りましょう。
処理時間
処理時間とは、通話の開始から後処理が終わるまでの時間。
以下の算出方法で処理時間の平均を出し、コールセンターの生産性や業務効率をチェックするのが一般的です。
平均処理時間(AHT :Average Handling Time)= (保留を含む総通話時間+総後処理時間)÷総対応件数
例えば、平均処理時間が6分だった場合、1時間に対応できる電話の数は10本。平均処理時間を1分短縮して5分にすると1時間に対応できる電話の数は12本に増加し、生産性が向上したと言えます。
このように人件費の面では処理時間は短い方が良いですが、処理時間の短縮にこだわるあまりに顧客対応が疎かになっては、コールセンターの本分を果たせません。顧客が必要とするサポートや自社のコールセンターのキャパシティに応じた適正な処理時間を定めるようにしましょう。
モニタリングスコア
モニタリングスコアとは、SVがオペレーターの応対品質を定量的に評価した点数のこと。
対応件数や処理時間だけでは分からない、オペレーターの応対品質を確認するために欠かせない指標です。
モニタリングスコアを付けるには、言葉遣いや回答の適切さを評価する「モニタリングシート」を作成し、点数を算出する必要があります。大切なのは、定期的に実施し、オペレーターへフィードバックを行うことです。オペレーターごとに長所と課題点を把握することで、応対品質の向上とオペレーターのモチベーションアップが期待できます。
コールセンターの応対品質を向上する方法は、以下の記事を参考にしてください。
▶管理者必見!コールセンター運用における応対品質の測定指標や改善策とは - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)
まとめ
カスタマーサポートで重視すべき指標について、理解が深まったでしょうか?
冒頭でも触れたとおり、指標とは「最終目標の達成」に近づくための手段です。
ぜひ以下の記事も参考にして自社に適した指標を設定し、良いスタートを切ってください。
▶コールセンター運営に欠かせないKPIを徹底解説 〜インバウンド編〜 - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)
「CS立ち上げのイロハ」は、カスタマーサポート部門立ち上げ期に直面するであろう課題とその対応方法について解説した資料です。
カスタマーサポートの重要性を理解し、顧客に愛されるサービスを目指しましょう。