近年、カスタマーサポートの新たなチャネルのひとつとして導入が盛んに行われているチャットシステム。これまで主流だった、電話+メール、またはショートメッセージによる顧客へのアプローチは時代とともに少しずつ変化しています。
そこで今回は、カスタマーサポートにおいて、チャットシステムの導入が精力的に進んでいる背景と、サポートチャネルを選定する際の注意点を解説します。
チャットシステムの導入がなぜ盛んなのかを知り、これからのカスタマーサポートの在り方と、顧客が求めるサポート体制について理解するきっかけにしてください。
- チャットによるサポートとは?
- サポートチャネルとしてチャットシステムの導入が進んでいる背景
- チャネル選定時に考慮すべきこと
- カスタマーサポートにチャットを導入するメリット・デメリット
- 電話によるサポートは今もなお必要不可欠なチャネルのひとつである
- これからのカスタマーサポートは電話とチャットの両チャネル運営が主流となる
チャットによるサポートとは?
チャットによるサポートとは、音声通話を使わずに文章によって顧客の課題解決を補助するシステムのことです。
チャットシステムはその運用方法によって以下の3種類に分けられます。
① 専門オペレーターによる「有人型」
専門オペレーターがリアルタイムで顧客と直接やり取りをする運用方法。電話によるサポートが苦手な顧客でも利用しやすいチャネルのひとつ。機械的な対応ではなくオペレーターがマンツーマンでサポートしてくれることから、電話対応と同様に顧客満足度が高くなりやすい。
② チャットボットによる「自動型」
チャットボットにも2種類あり、問い合わせ内容を選択肢のなかから顧客自身が画面をタップして進めていく「シナリオ型」、大量の情報を事前に学習させたうえで、問い合わせ内容に応じた自動回答を行う「AI型」がある。
チャットボットは完全自動応答システムであるため、専門オペレーターが不要。しかし、機械的な回答が多くなりやすく、複雑な課題の解決にはあまり適していないという欠点がある。
③ 有人型と自動型を融合した「ハイブリッド型」
ハイブリッド型のチャットシステムは、問い合わせの初期段階をチャットボットによる自動回答で行い、必要に応じて専門オペレーターとやり取りができる仕組みが採用されているケースが多い(問い合わせ開始時から「オペレーターへつなぐ」という選択肢が用意されている場合もある)。
チャットボットと有人対応のどちらでサポートを受けるか顧客が選択できるため、利便性の高さと課題解決率の向上が期待できる。
サポートチャネルとしてチャットシステムの導入が進んでいる背景
カスタマーサポートの現場では、新たなチャネルとしてチャットシステムの導入が精力的に進められています。
『コールセンター白書2021』によると、コールセンターで対応しているチャネルの種類を聞いたアンケート結果は以下のとおりです。
・出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2021』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.26/P103
2020年と2021年を比較すると「有人によるチャット対応」の数値はほとんど変化がありません。しかし「チャットボット」に関しては、2020年が28.1%、2021年が41.6%と、わずか1年の間で大幅に導入率が高くなっています。
その背景として考えられるのが、「ノンボイス化に向けた取り組みの強化」です。
ノンボイスとは、カスタマーサポートを中心とした顧客サポート部門が用いるチャネルのうち、電話対応を除いたチャネルの総称です。
テレワークの増加や若者の電話離れなどもあり、従来の電話対応に重点を置いた顧客サポートではなく、Webを活用したサポート体制の強化(ノンボイス化)を進める動きが加速しています。
その証拠に、今後対応予定のチャネルを聞いたアンケートでは、「チャットボット」と「有人によるチャット対応」がずば抜けて多くなっています。
・出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2021』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.26/P104
チャットだけでなく、SNSなどを活用した非接触型の顧客サポートを実施する企業も多くなりました。そこからわかるように、これからのカスタマーサポートには、従来通りの電話によるサポートだけでなく、より柔軟なチャネル運用が求められているのです。
チャネル選定時に考慮すべきこと
カスタマーサポートセンターでチャネル選定をする際に考慮すべき点として以下の2つがあげられます。
① 顧客層にマッチしたチャネルか
② メインチャネルとの組み合わせが適切か
それぞれの項目について解説します。
① 顧客層にマッチしたチャネルか
顧客の利便性を考慮すれば、電話やチャットなど、さまざまなチャネルから問い合わせできる環境が望ましいことはいうまでもありません。
しかし、自社製品やサービスを利用する顧客層にマッチしたチャネルでなければ、そもそも問い合わせ窓口としての利便性を欠く結果となります。
例として、若者向けの製品を販売する企業であれば、メインとなる顧客層にあわせ、チャットやSNSなどのWebを活用したチャネル選択が望ましいといえます。
② メインチャネルとの組み合わせが適切か
複数のチャネルを運営するとなると、ノウハウの蓄積や人材育成、システム投資などに時間やコストがかかります。そのため、自社のメインとなるチャネルを選定したうえで、それを補完するサブチャネルを組み合わせるのがベターです。
例えば、テクニカルサポートのような緊急性をともなう問い合わせをメインに取り扱うのであれば、即効性の高い電話をメインチャネルに据えるべきです。
その際、サブチャネルとして有人チャットやメールフォームなど、非接触型のサポートチャネルを組み合わせることにより、電話対応が苦手な顧客でも課題解決に向けたアクションを起こせる環境を整えることができます。
カスタマーサポートにチャットを導入するメリット・デメリット
カスタマーサポートにチャットを導入するメリットとデメリットをご紹介します。
■チャットのメリット
・チャットボットであれば24時間年中無休で対応できる
・電話対応が苦手な顧客でも手軽に問い合わせ可能
・電話対応と比べて顧客の待ち時間を短縮できる
・一度に複数人の顧客対応ができ効率的
■チャットのデメリット
・メールやSNSよりも早い回答が求められる
・専門オペレーターの育成が必要
・複雑な問い合わせの解決が困難
・電話と比べて顧客の抱いている感情を理解しにくい
有人、無人問わずチャットは便利なチャネルのひとつです。営業時間に縛られることなく24時間対応ができること、電話が苦手な顧客でも手軽に問い合わせができることなど、メリットも多いです。
しかし、複雑な問い合わせを解決するのが難しいため、場合によっては顧客に不快感をあたえる可能性もあります。また、電話と比べると優しいものの、メールやSNSによる回答より迅速なレスポンスが求められます。
電話によるサポートは今もなお必要不可欠なチャネルのひとつである
ここまではカスタマーサポートにおけるチャットの役割やメリット・デメリットを解説してきましたが、電話によるサポートの重要性が低下しているわけでは決してありません。
とくに50代以上の顧客にとっては、電話によるサポートは必要不可欠なチャネルです。『コールセンター白書2021』に掲載された、コールセンター利用者の年齢層をあらわした分布図からもそれは明らかだといえるでしょう。
・出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2021』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.26/P114
また、電話によるサポートは顧客の課題解決を迅速に遂行できます。そのため、「製品が故障した」「サービスサイトにログインできない」など、早急な解決が望まれる場面に適しています。
このことから、今後チャットによるサポート体制の強化が進んだとしても、電話によるサポートの重要性が変わることはないでしょう。
これからのカスタマーサポートは電話とチャットの両チャネル運営が主流となる
ノンボイス化を進めるなかで「顧客との接点をどう守り続けるか」という視点が、今後のカスタマーサポートセンターに求められています。
主流になりつつある、電話+チャットの複合チャネル運用をいかにうまく実行できるかが、今後を左右する大きなポイントとなってくるでしょう。
関連記事:コールセンターにおけるオムニチャネルとは?メリットや導入の注意点を解説
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(参考書籍)
- 「コールセンター白書2021」
月刊コールセンタージャパン編集部/株式会社リックテレコム/2021.10.26
- 「図解でわかる コンタクトセンターの作り方・運用の仕方」
(著)有山裕孝・仲江洋美・市瀬眞/株式会社日本実業出版/2021.3.1