こんにちは。「CallConnect」ライターチームです。
2018年、経済産業省が発表した「*2025年の壁」問題により、DXが注目を浴びるようになりました。
*2025年の壁:複雑化・老朽化した既存システムが残存した場合、国際競争力の低下や経済の停滞が懸念される問題のこと
しかし、「DXっていまいち分からない。コールセンターはどうしたらいいの?」と疑問を抱いている方も多いでしょう。
この記事では、コールセンターにおけるDXの事例や推進の手順について解説します。会社をより良い方向へ変革するために、ぜひ最後までチェックしてください。
コールセンターにおけるDXとは
コールセンターのDXとは、コールセンターの業務や顧客対応にテクノロジーを活用し、顧客または従業員の満足度向上や競争力の強化を実現させることです。
人手不足が深刻なコールセンター業界ではDXの推進が急務です。コールセンタージャパンの調査によると、チャットボットをはじめAIによるDX化を導入あるいは検討をしているコールセンターは77.9%にものぼりました。
引用:自動化、効率化、CX向上を実現する
コンタクトセンターの「DX」|コールセンタージャパン・ドットコム
「DX」の定義
そもそも「DX」とは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が以下のように提唱した概念です。
テクノロジーの浸透により、人々の生活のあらゆる面が変化する。
原文:The digital transformation can be understood as the changes that digital technology caused or influences in all aspects of human life.
これを受け、経済産業省はDXについて以下のとおり定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用:DX推進ガイドライン|経済産業省
「IT化」との違い
DX化と似ている「IT化」は、テクノロジーを活用して業務を効率化する意味があります。
これに対し「DX化」は、商品やサービス、ビジネスモデルの変革にまで踏み込みます。つまり、業務のいちプロセスの効率化に留まらず、従来「当たり前」だと思っていた固定観念を変え、新しい企業文化を作り上げるのがDX化です。IT化はDXの手段のひとつと言えます。
2020年の新型コロナウイルスの流行により、各業種で押印や対面のMTGなど従来の企業文化が変化し、ITを活かした新しい働き方が進んでいます。経済産業省はコロナ禍により、以下のようなDXの本質が表出したと分析しました。
- 多くの企業では、経営トップのコミットメントの下、コロナ禍を契機にしたDX化が達成された
- DX化の可否を分けたのは、これまで疑問を持たなかった企業文化の変革に踏み込むことができたかどうか
- 事業環境の変化に迅速に適応するには、ITシステムのみならず企業文化
(固定観念)を変革することの重要性が明らかになった
参考:DXレポート|経済産業省
コールセンターDXの事例
コールセンターのDXについてより具体的なイメージが掴めるように、以下3つの事例をご紹介します。
・保険会社コールセンターのDX
・証券会社コールセンターのDX
・電力会社コールセンターのDX
それでは順に見ていきましょう。
保険会社コールセンターのDX
ある保険会社ではAIを活用し、以下のとおり段階的にDX化を推進しています。
2018年 | 対話内容をテキスト化し、オペレーターの回答内容を提案 ⇒通話時間の短縮、対応品質の維持 |
2020年1月 | チャットボットで自動回答 ⇒営業時間外対応で顧客満足度の向上、入電数の削減 |
2020年3月 | 顧客の声を認識し自動受付 ⇒待ち時間の短縮で顧客満足度の向上、入電数の削減 |
2022年(予定) |
通話内容をテキスト化し、要約 ⇒後処理時間の短縮、待ち時間の短縮で顧客満足度の向上 |
現在では、問い合わせの電話の2~3割はAIによる完全自動対応を実現。オペレーターにつながった電話も、通話内容からAIが回答候補を提示する体制ができあがっています。2022年に実用予定の対話内容の要約機能では、自動でテキスト化された対応内容の履歴を三行ほどの文章に要約されるため、後処理時間が大幅に短縮。
複数のAIの使用には維持管理費の増大が懸念されますが、担当者は「現在は業務効率化の過渡期。費用対効果を見ながら最終的な運用方法を判断する」と話しています。
証券会社コールセンターのDX
ある証券会社では、クラウド型のコールセンターシステムを導入し、以下のようにDX化を推進しています。新システムは2021年8月から設計・開発を始め、2022年中に実用予定です。
- 通話内容をリアルタイムで音声認識し、通話終了後に自動的に要約
⇒後処理時間の短縮、待ち時間の短縮で顧客満足度の向上 - テキストマイニング技術で受電傾向やコールリーズン(お客様が電話をかけてくる理由)を自動的かつリアルタイムで把握
⇒顧客に発生している問題をいち早く捉え、FAQの事前準備や適切な
オペレーターの配備で顧客満足度を向上
また、クラウド型のコールセンターシステムには拡張性が高い特徴があるため、今後新しい機能を加える際に素早く導入できるというメリットもあります。
電力会社コールセンターのDX
ある電力会社では、AIを活用してDXを推進しています。
内容は、AIによる音声認識で契約番号や契約名義を確認する自動受付。2020年から音声認識機能の実証実験を行い、90%以上の精度が認められたことから、2021年以降実用されています。
これにより繁忙期やピーク時間帯の入電数が削減され、待ち時間が解消。顧客満足度の向上が期待されています。
コールセンターDXのメリット
コールセンターでDXを推進するメリットは、主に以下の3点です。
・顧客満足度の向上
・従業員満足度の向上
・事業の成長
以下で詳しくご説明しましょう。
顧客満足度の向上
DXの最大のメリットは、顧客満足度の向上です。
例えば、下図のとおり顧客の満足度に大きな影響を与える待ち時間を短縮するために、以下のようなテクノロジーが活用されています。
・チャットボットによる自動回答
・IVRなど自動音声による一次対応
・自動音声認識による自動受付
・通話内容のテキスト化と要約
・デジタルチャネルの増加(オムニチャネル)
こうした取り組みは入電数や電話1件あたりの処理時間を削減し、繁忙期や限られた人員でも顧客を待たせない体制づくりに役立っています。システムで対応可能な部分を自動化する分、オペレーターが受電する問い合わせではより丁寧に対応できるというのも、顧客の満足度につながっているでしょう。
また、LINEなど身近なメッセージアプリからも問い合わせられるオムニチャネル化も、顧客満足度の向上に貢献します。オムニチャネルについては以下の記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。
コールセンターにおけるオムニチャネルとは?メリットや導入の注意点を解説
従業員満足度の向上
DX化はオペレーターをはじめとした従業員の満足度向上にも役立ちます。
コールセンター業界の人材不足の要因は、業務量の多さやクレーム対応によるストレスだと言われて久しいです。しかし近年では、従来人間が行っていた業務がAIなどに置き換わり、オペレーターの負担が軽減されつつあります。
また、音声分析で顧客の感情を読み取り、クレームに発展しそうな時にはリアルタイムでSVに通知がいくなど、オペレーターのフォローに役立つ機能も登場しています。
高品質の応対ができるベテランオペレーターを増やすには、従業員満足度を上げ、離職率を下げる努力が欠かせません。働きやすい環境づくりに生きるDXについても、一度考えてみる必要があるでしょう。
事業の成長
データ収集や分析のDX化は、事業成長に大きく寄与します。
例えば、以下のようにVOCにまつわる作業を自動化することで、顧客のニーズや商品の改善点を素早く把握できるでしょう。
・通話内容のテキスト化と要約
・コールリーズンの統計
・VOC(顧客の声)の抽出
・AIによる分析支援
以前からVOCの重要性は認知されていましたが、データ分析にはノウハウや膨大な時間を要したため、多忙なコールセンターでは活用しきれない状況がありました。DXを推進し顧客ニーズの変化に対応できれば、競合他社に対し優位性を確立することも可能です。
コールセンターがDXを推進する4ステップ
コールセンターがDXを推進する方法には様々ありますが、基本的には以下の4ステップを踏みます。
①目指す姿を明確にする
②課題の洗い出し
③業務内容の見直し・システムの検討
④移行計画の立案・実行
以下で各ステップをご説明します。
①目指す姿を明確にする
先述のとおり「DX化」は、商品やサービス、ビジネスモデルの変革にまで踏み込みます。そのため、「業務を効率化したい」という漠然とした思いだけではなく、どんな企業文化にしたいかという明確なビジョンを描く必要があります。
目指す姿を社内で共有することで、DX化が頓挫……という失敗を防ぐことになります。
また、そのためには企業のリーダーがリーダーシップを発揮することも、非常に重要です。
②課題の洗い出し
目指す姿を実現するためには、どんな課題を乗り越える必要があるのかを洗い出します。コールセンターの現場では、以下のような課題が考えられます。
・平均処理時間が長く、応答率が低い。
待ち時間が長いため、顧客満足度の低下につながっている。
・商品/サービスの改善が進まず、クレームの電話が多い。
・VOCを有効活用できておらず、同じ問い合わせが複数発生している。
③業務内容の見直し・システムの検討
次に、課題解決の手段を決めるために、業務内容を見直します。
コールセンターDXの取り組みは以下の3つに分かれると言われているので、どこからテコ入れするのかを検討すると良いでしょう。
- プロセスのデジタル化(対応内容のテキスト化、要約など)
- コミュニケーションのデジタル化(チャットボット、自動応答など)
- 統計・データのデジタル化(VOCの抽出、AIの分析支援など)
そして変革が必要な業務に合わせ、どのようなシステムを導入するか検討します。
④移行計画の立案・実行
DXに使用するシステムが決まったら、システムの設計や導入スケジュールを決めます。
既存システムのデータを移行するのか否かについても検討が必要です。また、オペレーターが新しいシステムを使いこなせるように、準備期間や研修についてもあらかじめ決めておきましょう。
まとめ
今回はコールセンターのDX推進について、ご紹介しました。
この記事をきっかけにDXが進み、あなたのコールセンターがより多くのお客様に愛されることを願っています。
「CallConnect」は、クラウド型のコールセンターシステムです。
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