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2023.11.22
SNS時代の顧客対応とは?カスタマーサポートのソーシャルメディア戦略

今や私たちの生活と密接に関わっているソーシャルメディア。
2022年に総務省が行った調査によると、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用する個人の割合は各年齢層で着実に伸び、全体で8割に達しています。
そのため、ソーシャルメディアを有効活用したいと考えている管理者の方も多いのではないでしょうか?

総務省,令和4年通信利用動向調査の結果

しかし、ソーシャルメディアは諸刃の剣です。せっかく企業アカウントを立ち上げても、適切に運営できなければユーザーからの信頼を失いかねません。
そこで本記事では、企業のカスタマーサポート部門がソーシャルメディアを活用するメリット・デメリット、運営のポイントなどをご紹介します。

ソーシャルメディアの活用事例

まずは、ソーシャルメディアを通じた顧客のサポートとはどんなものかを知るために、以下3つの事例をご紹介します。

<ソーシャルメディア 3つの活用事例>

  • アスクル
  • ドコモ
  • 進研ゼミ小学講座

アスクル

アスクル株式会社は、X(旧Twitter)に「アスクルお客様サービスデスク」というアカウントを設けて問い合わせを受け付けています。

参考:https://twitter.com/askul_cr

本アカウントではメンションされた問い合わせへの回答だけではなく、以下のような自社サービスに関する投稿を自ら見つけにいき、リアクションをとる運用がとられています。

主なリアクションは、以下の2通りです。
・ネガティブな投稿への謝罪や解決策の提案
・ポジティブな投稿のリツイート
問題が発生した場合は、DMで詳細情報をもらえるように提案して個別に対応しています。

このようにSNS上でのサポートをあまり期待していなかった顧客にも丁寧にリアクションすることで、投稿者はもちろん、やりとりを目にした潜在顧客にも親しみをもってもらえる効果が期待できるでしょう。

ドコモ

NTTドコモも、X(旧Twitter)に「ドコモ公式サポート」というアカウントを設けて問い合わせを受け付けています。

参考:https://twitter.com/docomo_cs

本アカウントでは、以下のような活動が行われています。
・「よくあるご質問」の紹介
・メンテナンス工事の告知や災害時に役立つ情報
・メンションされた問い合わせへの対応

問い合わせへの対応に関して特徴的なのは、以下のような対応方針をプロフィールページの一番上にピン留めし、明示している点です。

画像

参考:https://x.com/docomo_cs/status/1549231743751794689?s=20

このように、できること・できないことを顧客に分かりやすく示すことは、アカウントを安定的・継続的に運営する上で、非常に重要です。

進研ゼミ小学講座

ベネッセコーポレーションは、LINEの「こどもちゃれんじ・進研ゼミ問い合わせ窓口」というアカウントで24時間問い合わせを受け付けています。

参考:こどもちゃれんじ・進研ゼミ問い合わせ窓口 | LINE Official Account

対応するのは、自動応答とオペレーターの2通り。
電話をかけてきたユーザーをLINEでのメッセージ対応に誘導する取り組みも行っており、従来電話対応に要していたリソースが大幅に削減されています。

カスタマーサポートがソーシャルメディアを利用するメリット

ソーシャルメディアを利用するメリットは、主に以下の4点です。

カスタマーサポートがソーシャルメディアを利用する4つのメリット
  • 顧客の生の声を知れる
  • ネガティブなイメージの拡散を防げる
  • 顧客のファン化につながる
  • ”コストセンター”からの脱却

顧客の生の声を知れる

ソーシャルメディアの活用において、最も大きなメリットは顧客の生の声を知れることです。
カスタマーサポートでは、クレームの抑止や顧客満足度の向上のためにVOC(Voice of Customer)活動を行っているところが少なくありません。従来は電話やメール、アンケートなどで寄せられた声を分析していましたが、多くの人が日常的に使用するソーシャルメディアを加えることでサポートの幅がより広がります。
顧客が「わざわざカスタマーサポートに連絡するのは面倒」と感じて問い合わせにつながらなかった潜在的なトラブルも見つかりやすくなり、顧客離れが防げるのもメリットです。

VOCについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

VOCとは?活用のメリットやポイントをご紹介。 - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)

ネガティブなイメージの拡散を防げる

風評被害や不買に発展する可能性のある投稿に対し、正しい情報の提供や誠意ある対応をとることで、企業のネガティブなイメージの拡散を防げます。
情報を発信する手段として企業のプロモーションにも多く活用されているソーシャルメディアですが、同時に、悪い評判や事実無根の話が広まってしまうリスクと隣り合わせです。

そのため、カスタマーサポートで培われた顧客対応のノウハウを活かした早急な問題解決や心のこもった謝罪ができる公式アカウントをもつことは、企業のブランドを守る上で重要なポイントになります。
ネガティブな投稿へのリアクション次第では、新たな顧客の獲得にもつながるのです。

顧客のファン化につながる

ソーシャルメディアを活用することで顧客との距離が縮まり、商品やサービスをリピートしてくれるファンの増加が期待できます。
例えば、以下のように活用すれば、顧客満足度が向上するでしょう。

・初めて自社製品を購入した顧客が「設定方法が分からない」と投稿した際、マニュアルを紹介したり、分かりにくい点について改善したりする
・顧客の「こんな商品が欲しい」という投稿を元に商品を開発/改善する

このような顧客一人ひとりに寄り添ったアプローチが、単に商品を使うだけでなく、企業を「応援」してくれるファンを増やすことにつながります。

”コストセンター”からの脱却

ここまでご紹介したメリットが生まれることで、カスタマーサポートが問い合わせ対応をするだけの”コストセンター”から脱却できます。
もちろん、電話やメールに寄せられるVOCへの対応も重要ですが、ソーシャルメディアが大きく違うのは、やりとりをしている顧客以外の人の目にも触れる点です。
やみくもに広告にコストを費やすより、ソーシャルメディアを通して顧客と良い関係性を構築する方が、結果的には売上の拡大につながるでしょう。

カスタマーサポートがソーシャルメディアを利用するデメリット

ソーシャルメディアを利用するデメリットは、主に以下の2点です。

カスタマーサポートがソーシャルメディアを利用する2つのデメリット
  • 内容によっては信頼の低下を招く
  • 継続が必要

内容によっては信頼の低下を招く

ソーシャルメディアに投稿する内容によっては、企業の信頼を低下させるリスクがあります。
「問い合わせに答えるだけなら炎上はしないのでは?」と思うかもしれませんが、要注意です。不特定多数の人が見るソーシャルメディア上では、以下のような対応が原因で信頼を損ねてしまいます。

<ソーシャルメディアで企業の信頼低下を招く対応>
・回答がテンプレートの文章ばかり
・問い合わせを長期間放置する
・ネガティブな投稿を削除、または非公開にする
・誠意ある謝罪をせず保身に走る
・回答の文章が長過ぎて理解しづらい
・言葉遣いが誤っている、誤字脱字が多い

信頼の低下を防ぐためには、投稿にふさわしくない内容や言葉遣いについて社内でガイドラインを作成し、周知しておくことが大切です。

継続が必要

ソーシャルメディアを通して顧客と親密になるには、アカウントの運用を継続する必要があります。というのも、SNSは短期間で目覚ましい成果が上がるものではないからです。
その分手間も増えるため、負担を軽減するための工夫が欠かせません。
成功事例を参考にしながら、ソーシャルメディアでやること・やらないことをルール化し、安定して運用できる体制をつくりましょう。

代表的なソーシャルメディア

近年代表的なソーシャルメディアは、「コミュニケーション中心」と「コンテンツ中心」のものに二分されます。

それぞれの代表例と特徴は、以下のとおりです。

<コミュニケーション中心>
  • X(旧Twitter):匿名制のSNS。情報のリアルタイム性・拡散性が高い
  • Facebook:実名制のSNSのため、利用者のプロフィールが充実
  • LINE:連絡手段としてインフラ化しているSNSで利用者のアクティブ率が高い
<コンテンツ中心>
  • YouTube:編集された動画がメイン。拡散するには他SNSとの併用を推奨
  • Instagram:ショッピング機能など自社サービスの利用につながる機能が充実
  • TikTok:決まったフォーマットで制作された動画がメイン

カスタマーサポートに適しているのは、X(旧Twitter)をはじめとしたコミュニケーション中心のSNSです。直接メッセージのやりとりができるため、顧客との親密度がアップします。
一方、コンテンツ中心のSNSは、企業の世界観を伝える手段として使用されるケースが多いです。
企業アカウントとしてSNSを運用する目的(マーケティング/広報/コミュニケーション/カスタマーサポート)に合ったプラットフォームを選択するようにしましょう。

ソーシャルメディアを運用する流れ

カスタマーサポートがソーシャルメディアを運用する流れは、基本的に以下のとおりです。
(※顧客が問い合わせてくるのを待つ従来型のサポートではなく、カスタマーサポートがユーザーの不満や問題を発見し、積極的にサポートしていく「アクティブサポート」の手法を想定しています)

ソーシャルメディアを運用する流れ
  1. ソーシャルリスニングで事前調査
  2. 対応方法をルール化
  3. 目的に合ったSNSを選びアカウントを作成
  4. キーワードで検索し対応可否をチーム内で判断
  5. 解決に向けてメッセージのやりとりを開始

ソーシャルリスニングで事前調査

まずは、ソーシャルリスニングで事前調査を行います。
ソーシャルリスニングとは、SNSやブログといったソーシャルメディア上で交わされるユーザーの会話を収集・分析し、リスク管理やマーケティングなどのビジネスプロセスに活用することです。
自社の課題や求められている商品・サービスをあらかじめ把握することで、今後の運用方針が決めやすくなります。

対応方法をルール化

SNSでの対応方法は必ずルール化し、対応にあたるメンバーに周知しておきましょう。
ルール化すべき事項には、以下のようなものがあります。

<ルール化すべき事項>
・投稿、リプライ、リポストなど、SNS上で何をして何をやらないか
・定期的に検索するキーワード(企業名、商品/サービス名、製品番号など)
・文章や画像、動画のトーンマナー
・ネガティブな投稿への対応方法
・オープンスペースからDMのような個別対応に切り替えるタイミング

目的に合ったSNSを選びアカウントを作成

先述の通り、SNSはプラットフォームによって特徴やユーザー層が大きく異なります。ソーシャルリスニングの結果も踏まえて目的に合ったSNSを選択し、企業アカウントを作成しましょう。

キーワードで検索し対応方針をチーム内で判断

事前に決めておいたキーワードをSNS上で検索したら、自社に関する投稿がヒットするはずです。その中に不満や悩みを抱えている顧客がいる場合、運用開始からしばらくは対応方針をチーム内で協議・判断することをお勧めします。
都度チームで話し合い決定事項をマニュアル化することでノウハウが蓄積し、安定した運用の実現につながります。

解決に向けてメッセージのやりとりを開始

チームで話し合った対応方針に基づき、顧客とのコミュニケーションを開始します。
もし災害や大規模なシステム障害などが起こった場合、適しているのは個別の対応より全体への情報発信です。SNSの拡散性を活かしつつ、柔軟なサポートを行いましょう。

まとめ

カスタマーサポートによるソーシャルメディアの活用について、イメージが膨らんだでしょうか?
最近では、ソーシャルメディアのアカウントとカスタマーサポートのCRM(顧客管理システム) を連携させる「ソーシャルCRM」も生まれています。もはや生活の一部になったソーシャルメディアを上手に活用し、顧客との関係性を深めていきたいですね。

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