新規事業を立ち上げる際、お客様からの問い合わせに対応するためにカスタマーサポート窓口を開設する必要があります。もちろん、事業規模や内容によって形態はさまざまなので大規模なセンターである必要はありません。しかし、ある程度の顧客対応ができる環境を迅速に構えなければいけないことに変わりありません。
では、実際にカスタマーサポート窓口を開設する際、どのような準備が必要となるのでしょうか?
今回は、カスタマーサポート業務に欠かすことのできない「FAQ」にスポットを当て、FAQの作り方や項目として入れておきたい内容などについて解説します。
- カスタマーサポートにおけるFAQの重要性
- FAQを作成する際の手順と注意すべきポイント
- 用意しておきたいFAQの項目とは?
- FAQの活用によって得られるメリット
- カスタマーサポートの現場におけるFAQの作成・管理の課題点
- FAQの項目は事業活動を進めながら追加・修正を重ねる必要がある
カスタマーサポートにおけるFAQの重要性
カスタマーサポートには日々さまざまな問い合わせが入ります。なかには難易度の高い問い合わせ内容も存在するため、課題解決までに時間を要してしまいます。
そんなときに役に立つのが、オペレーター向けに作成されたFAQです。オペレーターは入社時研修やフォローアップ研修などで知識を蓄えていますが、それだけですべての問い合わせに対応するのは困難です。
そのため、FAQをはじめとした各ナレッジによってオペレーターの業務支援を行う必要があるのです。
もしFAQが存在していないと、オペレーターは問い合わせ内容に対してそれぞれ異なる返答をしてしまうかもしれません。そうなると、誤案内によるクレームや契約解除などの問題が発生する可能性が高くなります。
カスタマーサポートにおいて、FAQはオペレーターを支援するナレッジのひとつとして重要な役割を持っているといえるのです。
FAQを作成する際の手順と注意すべきポイント
FAQを作成する際の手順と注意すべきポイントについて解説します。
(1)情報収集をする
FAQを作成するためにしなければならないのが、情報収集です。「どのような問い合わせが多いのか」「オペレーターが返答に困る問い合わせ内容は何か」などの情報を集めます。情報の収集方法はさまざまですが、システムに保存されている問い合わせ記録などを参考にするのが有効です。
(2)質問に回答を紐づける
集めた質問に対して的確な回答を紐づけていきます。この際、紐づけた回答が正しいものになっているか、作成に関与していない人物に確認してもらいましょう。そのほうがよりフラットな視点で間違いに気づけます。
(3)カテゴリー別に分類する
質問と回答を紐づけたあとは、カテゴリーに分類します。例えば、「料金関連」「契約関連」「サービス内容関連」などに分けることもあります。
※例としてあげているのはあくまで大枠の分類であり、そこからさらに細かく階層化していくとわかりやすくなります。ただし、細かくなりすぎると把握しづらくなるため、多くても3階層程度に留めるのがおすすめです。
(4)公開して評価・分析を行う
作成したFAQをオペレーターや管理者に公開し、わかりにくい文言や内容を指摘してもらいます。修正を行った部分は複数名に確認してもらうことで、より正確性の高いFAQになります。
(5)定期的なメンテナンスを実施する
FAQは一度作っただけで終わりではないため、修正や追加などを定期的に実施しなければなりません。とくに事業を開始して時間が経つと、FAQの内容が現在の運用と異なってくることがあります。そのため、ナレッジ作成の担当者には都度内容の確認を徹底することが求められます。
用意しておきたいFAQの項目とは?
FAQにはさまざまな項目が存在していますが、to B、to Cどちらの場合でも最低限抑えておきたい内容は以下のとおりです。
・サービス概要
・お支払い方法
・送料、手数料
・問い合わせ窓口一覧(窓口が複数に分かれている場合)
・契約変更が発生する場合の注意事項 など
自社サービスの概要や料金、顧客を正しい問い合わせ窓口に誘導するための窓口一覧、契約変更があった場合の注意事項などは、事業の内容に限らず必要です。FAQに取り入れる内容がわからないという場合には、これらの項目から考えてみるとよいでしょう。
また、競合他社のホームページなどを閲覧し、そこに掲載されている「よくある質問」の内容を参考にするのもひとつの手です。掲載された内容には質問+回答がすでにセットになっているため、他項目のFAQを作る際にも参考にできます。
FAQの活用によって得られるメリット
FAQの活用によって得られるメリットを3つご紹介します。
応対時間の短縮
FAQの内容を充実させることで、応対時間の短縮を図れます。例えば、同じ内容の問い合わせが多く入るようなら、FAQとして事前に整備しておくことで、顧客に対し迅速かつ的確な回答ができます。
FAQを整備すると、応対時間の短縮だけでなく、応対できる件数の増加も見込めるため、受電率の低下を防ぐという間接的なメリットも期待できます。
業務負荷を分散できる
カスタマーサポートなどのコールセンターでは、知識や経験を持った業務効率の良いオペレーターに負荷が集中してしまいがちです。最低限必要なFAQを設けることで、誰でも一定のレベルで顧客対応できるようになり、特定のオペレーターに負荷が集中する状況を防ぐことができます。
オペレーターのスキル標準化を図れる
しっかりとFAQを整備していれば、新人オペレーターであってもベテランと同じように正しい情報のもと顧客対応ができます。いうなれば、オペレーター全体のスキルをある程度の一定水準に保つことができるということです。
安定したコールセンター運営をしていくためには、突出した個人ではなく、全員が同じように対応できる環境を作ることが大切です。スキルの標準化を推進するうえでFAQなどのナレッジが重要な役割を果たしていると理解しておきましょう。
カスタマーサポートの現場におけるFAQの作成・管理の課題点
カスタマーサポートの現場におけるFAQの作成・管理には、「更新頻度や整備体制にばらつきがある」という課題が存在します。
『コールセンター白書2022』によると、オペレーター向けFAQについて聞いたアンケート結果はこのようになっています。
・出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2022』/株式会社リックテレコム/東京/2022.10.31/P73
「用意して随時アップデートしている」との回答が62%と大半を占める一方、「用意していない」とする回答も7%あることがわかります。
先述したように、FAQはオペレーターの業務を手助けする大切なナレッジのひとつですので、用意すらされていないという状況では、健全なセンター運用を行うことはできません。
とくに新規事業を立ち上げた直後などは、製品やサービスのリピート客を増やすという意味合いからも、より迅速かつ正確な対応がカスタマーサポートに求められるというのは言うまでもありません。
いまだにFAQを整備していない、まともに更新していないという企業があるなら、FAQなどのナレッジがいかにオペレーターの手助けになっているか、顧客の利益になっているかを再度考える必要があるといえるでしょう。
FAQの項目は事業活動を進めながら追加・修正を重ねる必要がある
今回はカスタマーサポート業務で必要となるFAQの作成方法や取り入れておきたい項目について解説しました。
業種によってFAQに掲載すべき内容は異なりますので、まずは競合他社のホームページなどを閲覧し、そこから「よくある質問」として共通する部分を参考にするのもよい方法です。
FAQはオペレーターの業務を手助けしてくれる大切なナレッジのひとつです。事業活動を進めながら、必要に応じて追加・修正などを積み重ねていきましょう。
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