2023年7月、日本政府観光局がまとめた訪日外国人数は、コロナ禍前の2019年7月(299万人)の77.6%の水準まで回復しました。
これを受け、外国人からの問い合わせが増えたコールセンターも少なくないはずです。
参考:7月の訪日外国人客数、2019年比8割に迫る : 韓国・米国はコロナ禍前上回る | nippon.com
そこでこの記事では、コールセンターの多言語対応について、運用方法や注意点を解説します。
運用開始後のイメージを具体的にするために、ぜひ最後までチェックしてください。
多言語コールセンターとは
多言語コールセンターとは、日本語に限らず、英語や中国語をはじめとした複数の言語でカスタマーサポートを提供するコールセンターのことです。
訪日外国人の増加や企業の海外進出が進み、様々な業種で外国人からの問い合わせは増加傾向です。そのため、観光・医療・官公庁・自治体・交通・通信・金融・公共インフラなどで幅広く多言語コールセンターが導入されています。
グローバル市場で競争力を維持したい企業にとって、異なる言語や文化を尊重しながらサービスを提供する多言語コールセンターは、顧客獲得の要です。
多言語コールセンターの3つの運営方法
多言語コールセンターは、主に以下3通りの方法で運営されています。
- 自社内に外国語が話せるスタッフを常駐させる
- 外部の多言語コールセンターに依頼して顧客とのやり取りを翻訳してもらう
- 外部の多言語コールセンターに依頼して顧客対応をしてもらう
外部に翻訳を依頼する場合は、以下動画のように電話による三者通話接続が主流です。
youtu.be多言語コールセンターによっては、テレビ電話やメール、チャットなどの翻訳を行っています。
各運営方法のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
自社内に外国語が話せるスタッフを常駐させる | 外部の多言語コールセンターに翻訳を依頼 | 外部の多言語コールセンターに顧客対応を依頼 | |
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メリット |
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デメリット |
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ご覧のとおり、どれも一長一短です。
そのため、「多言語対応で何を重視するのか」を明確にした上で運営方法を決めるようにしましょう。
外部の多言語コールセンターに依頼する場合
外部の多言語コールセンターに依頼する場合、以下2つの種類があります。
- 外国人旅行者のために都道府県や地方自治体が提供するサービス
- 一般企業向けに多言語コールセンター事業者が提供するサービス
外国人旅行者のために都道府県や地方自治体が提供するサービス
都道府県や地方自治体は、外国人旅行者との円滑なコミュニケーションを支援するために多言語コールセンターサービスを提供しています。
そのためサービスの提供先は、宿泊施設・観光施設・飲食店・小売店・交通機関などがメインです。
<都道府県や地方自治体による多言語コールセンターの提供先施設>
参考:多言語コールセンターの実態調査について 平成30年3月 観光庁基本的には、施設が登録をすれば翻訳料は無料。サービスを利用する際に、コールセンターにつなぐまでの通話料のみ、施設の負担となります。
東北地方・関西地方・中国地方・四国地方を中心に導入が進んでおり、都道府県の枠を超えてサービスを提供する「広域サービス」も存在します。
2017年時点での多言語コールセンター提供状況は以下のとおりです。
<全国の広域・都道府県レベルの多言語コールセンター提供状況(2017年6月時点)>
参考:多言語コールセンターの実態調査について 平成30年3月 観光庁多言語コールセンターがある場合は、以下のようなサイトが上位に表示されます。
▶多言語コールセンター|観光 - 東京都産業労働局
一般企業向けに多言語コールセンター事業者が提供するサービス
一般企業向けには、ランゲージワン株式会社、株式会社ベルシステム24、株式会社テレコメディアといった事業者が多言語コールセンターサービスを提供しています。
都道府県が提供するものより対応言語が多く、チャットやFAQなど多彩なチャネルに対応できるのが特徴です。
依頼を検討する際には、複数の事業者から見積もりをとり、比較検討するようにしましょう。
コールセンターの多言語対応の注意点
コールセンターが多言語対応をする際に、注意すべき点は以下の4つです。
- 言語だけではなく、文化や価値観も踏まえた対応が求められる
- 言語スキルや顧客対応の質を判断する必要がある
- オムニチャネルが求められる
- 都道府県や地方自治体が提供する多言語コールセンターが利用制限を設けているケースがある
言語だけではなく、文化や価値観も踏まえた対応が求められる
外国人の顧客対応をするには、出身国の文化や宗教的価値観、国ごとの時差などを踏まえる必要があります。言語だけ通じても、日本人の価値観を押し付ける対応をすれば、コミュニケーションが滞るばかりか、クレームにつながってしまうからです。
オペレーターに母国語ではない言語での翻訳や顧客対応を依頼した場合にも、顧客との間にトラブルが生じる可能性があります。例えば、フィリピンが拠点の多言語コールセンターに英語での対応を依頼した場合、言語が堪能でも、感性や文化の違いによる食い違いや、ネイティブであれば起こらないような聞き間違いなどが生じるのです。
トラブルをゼロにすることはできませんが、依頼先を選ぶ際には、「顧客の出身国情報に精通しているか」「その言語での対応実績が豊富か」といったポイントをチェックしておくと良いでしょう。
言語スキルや顧客対応の質を判断する必要がある
運用方法に関わらず、自社の中に多言語対応の言語スキルや顧客対応の質を判断する仕組みが求められます。なぜなら、翻訳に間違いがあったり、マニュアルと異なる対応をとっていた時に気づけなければ、知らない間に問題が大きくなってしまうリスクがあるからです。
また、多言語対応のために顧客対応の内容がマニュアル化されているため、複雑で臨機応変な案件に対応しづらく、顧客に不満を抱かせることも少なくありません。
社内に日本語と外国語の両方が流暢な人材がいることが理想的ですが、いない場合でも翻訳ツールなどを活用し、こまめに多言語対応のクオリティをチェックするようにしましょう。
オムニチャネルが求められる
世界的にコミュニケーションツールやAIが発達する中、電話だけの多言語対応では顧客に不便を感じさせる場面もあります。
テレビ電話、メール、チャット、SNS、FAQなど、幅広く多言語チャネルを用意することで顧客満足度の向上が期待できます。
都道府県や地方自治体が提供する多言語コールセンターが利用制限を設けているケースがある
都道府県や地方自治体が提供する多言語コールセンターでは、一部の施設にサポートが集中するのを防ぐために、以下のような利用制限を設けているケースがあります。
- 1回あたりの通話時間は5分以内
- 1か月あたりの利用は60件まで
- 大型施設の利用は不可
- 専門性の高い医療分野などは通訳の対象外
サービス提供元のサイトにて、あらかじめ条件を確認しておきましょう。
まとめ
グローバル化が進む中、コールセンターの多言語対応は顧客獲得や顧客満足度向上の重要なポイントとなりました。
実際に運用をスタートした後には、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、多言語対応の品質を改善していってください。
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