サブスクリプション型サービスの台頭によって広まった「カスタマーサクセス」。それを実現するための手段として、「タッチモデル」と呼ばれるアプローチが注目されています。
しかし、「具体的に何をするの?」と疑問を抱いている方も多いでしょう。
そこでこの記事では、タッチモデルにおける3つの段階(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)の概要や、それらを決定する要素について解説します。
「そもそもカスタマーサクセスって?」という方は、こちらの記事も参考にしてください。
▶コールセンターで取り組めるカスタマーサクセスとは - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)
- カスタマーサクセスのタッチモデルとは
- ハイタッチとは
- ロータッチとは
- テックタッチとは
- ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを決める要素
- ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチに共通する「コミュニティタッチとは」
- まとめ
カスタマーサクセスのタッチモデルとは
カスタマーサクセスの「タッチモデル」とは、想定されるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)によって顧客を3段階に分け、各段階に合わせてアプローチ方法やリソースの分配などを変える手法のことです。
タッチモデルの目的は、顧客を3段階に分けて、アプローチの方法をパターン化することで、限られたリソースの中でも効率的に顧客の成功を支援することです。
実際に以下のような企業がタッチモデルを採用し、カスタマーサクセスを実現しています。
・株式会社セールスフォース・ドットコム
・Sansan株式会社
・freee株式会社
・Slack Technologies, Inc.
・株式会社SmartHR
「企業名 タッチモデル」で検索すると、事例に関する詳しい情報がヒットするので、ぜひチェックしてみてください。
ハイタッチとは
ここからは、タッチモデルの各段階について説明していきましょう。
ハイタッチとは、LTVが高い顧客や影響力の大きい顧客などに対し、担当者による「1対1」の手厚い対応を行うアプローチです。
・対面で行う定例ミーティング
・システムやツールの活用方法を伝える個別の勉強会
・1対1で行うメールやWeb会議
・個別の提案資料
・経営層への情報共有
ハイタッチ層は顧客企業を代表する存在のため、カスタマーサクセスへのコミットが自社の成長に直結します。そのため、専任担当者などのリソースをかけて、変化する状況に臨機応変に対応しながら最適なサポートを提供するのです。
また、ハイタッチ的なアプローチを行うことで顧客のニーズや課題を深く理解でき、結果的にカスタマーサクセス全体の精度向上にも繋がります。
ロータッチとは
ロータッチとは、LTVの中間層に対して、担当者による「1対複数」をメインとした対応を行うアプローチです。
・契約企業を集めたセミナー
・一斉配信メール
・数か月に一度行うミーティング
ロータッチ層は、ハイタッチ層程ではないものの、収益に影響を与える存在です。そのためハイタッチほどリソースは割けずとも、対人でサポートを行います。
複数の顧客を兼任する担当者がつくケースが多いため、ハイタッチの要素(個別対応)とテックタッチの要素(システムによる活用支援)を掛け合わせた効率的なサポートが求められています。
テックタッチとは
テックタッチとは、ハイタッチ・ロータッチ層よりLTVが低い層に対して、人を介さずデジタルツールのみで顧客対応を行うアプローチです。
・Webサイトのコンテンツ(チュートリアルや学習ガイドなど)
・FAQ
・チャットボット
・メールマガジン
・ユーザーコミュニティ
LTVは低くても、ハイタッチ・ロータッチ層より顧客の数は多いのが一般的です。その分、可能性を秘めている層と言えるでしょう。
担当者不在のテックタッチを成功させるには、使い勝手が良く、顧客を自己解決に導くシステム設計が肝要です。もし操作が分かりづらいと、サポートセンターへの問い合わせに繋がり、ユーザー体験が損なわれるとともに、有人対応が必要になるからです。
そのため、顧客を深く理解し、要望や課題を予測した上で、継続的にツールを改善することが求められています。
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを決める要素
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチは、主に以下2つの要素をもとに分類します。
・顧客の製品活用の成熟度
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)
顧客を3段階に分類する際には、LTVに基づいて判断するのが一般的です。
顧客から生涯にわたって得られる利益のことであり、将来的にどれだけの利益が発生するかの予測を含む。
業種やビジネスモデルによって算出方法は異なり、以下は代表的な計算式のひとつ。
LTV = 平均顧客単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年)× 平均継続期間(年)
新規顧客で購買頻度などが分からない場合には、高額プランの契約者をハイタッチ、次に額の高いプランの契約者をロータッチ、それ以外をテックタッチとするのが一般的です。
なぜなら対人コミュニケーションが増えるほど、人的リソースやコストも増加するからです。ハイタッチのような手厚いサポートを提供するには、高い顧客単価が必要となるのです。
そのため、製品単価が安い企業の場合はテックタッチを基本とし、顧客の希望に応じてハイタッチ・ロータッチ的なサポートを有償で提供するケースもあります。
顧客の製品活用の成熟度
顧客が製品やサービスを導入した後、どれだけ活用できているかの成熟度も判断基準のひとつです。
導入後の顧客の成熟度は、「定着」→「活用」→「自走」の流れでフェーズが変わっていきます。この中で最も手厚いサポートが必要なのは、「定着」で留まっている顧客です。
なぜなら、製品やサービスを活用しきれていない状態の顧客層は、最も解約の可能性が高いからです。基本的な使用方法や魅力が伝わりきらないまま解約になる恐れがあるため、頻繁にコミュニケーションを取り、製品について知ってもらう必要があります。
一方、「活用」や「自走」ができる顧客の場合は基礎知識があり、デジタルツールを活用しつつ自己解決できるため、多くのサポートを必要としません。提案するのも、アップセルやクロスセルに関する内容になるでしょう。
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチに共通する「コミュニティタッチとは」
コミュニティタッチとは、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチといった分類に関わらず、顧客なら誰でも参加可能なプラットフォームを用意することです。
顧客同士でコミュニケーションを取れるため、FAQに載っていないような疑問点も相談でき、カスタマーサポートが介入せずとも早期解決が期待できます。
また、製品やサービスに関する口コミが多く寄せられるようになると、他商品を検討している顧客のアップセル・クロスセルの促進に繋がったり、VOCとして分析し製品の改善に繋がったりするメリットもあります。
まとめ
タッチモデルについて理解が深まったでしょうか?
タッチモデルでは顧客を効率的に成功へと導くためにセグメントを行いますが、場合によってはハイタッチの顧客がテックタッチを求めることや、その逆のパターンもあるでしょう。
担当業務が細分化されている大企業は、製品やサービスについて知識が豊富なのに対し、少ない人数で様々な業務を兼任している中小企業は知識を得る時間がなく、手厚いサポートを必要としているというのはよくあることです。
そうした際には、各層をまたいだ柔軟な対応をとることが大切です。無理に定型に当てはめようとすると、顧客体験を損ない、カスタマーサクセスから遠ざかってしまいます。
顧客を成功に導くことが自社の成功に繋がることを念頭に置き、最適なサポートの提供を心がけましょう。
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