コールセンターでは、スーパーバイザー(SV)から順に昇進して「センター長」になるのが一般的。現場に精通していると自負する方も多いでしょう。
しかし中には、時代の変化に対応していない方や、他部門から異動してきたばかりで右も左も分からない方など、問題を抱えているセンター長も少なくありません。
そこで本記事では、センター長としてより一層活躍するためのポイントやスキルについてご説明します。「いずれはセンター長になりたい」と考えている方も、予習のためにぜひ最後までチェックしてください。
センター長の立ち位置
最初に、コールセンターにおける「センター長」の立ち位置を確認しておきましょう。
センター長とは下図の通り、コールセンター全体を統括する最高責任者です。
マネージャー・スーパーバイザー・リーダーが現場の運営に注力するのに対し、センター長は経営者的な視点から中長期的な目標設定や収益管理を行うのが一般的です。
センター長に期待される役割の変化
ITの進化やSNSの普及で消費生活が目まぐるしく変化する現在、コールセンター、ないしはセンター長に期待される「役割」にも変化が起きています。
従来、コールセンターは顧客からの問い合わせを”受け続ける”という業務の性質上、受け身になりがちでした。大量の問い合わせに迅速、かつ丁寧に回答するには多くの労力を要するため、ほとんどのコールセンターにおいて、一定のつながりやすさと応対品質を維持する「安定稼働」が最重要課題になってきたのです。現場はSVに任せると言いつつも、人手不足にあえぐ現場のハンドリングに苦心してきたセンター長も少なくないのではないでしょうか。
しかし、生成AIをはじめ高度なIT技術が普及しつつある近年では、以下のような姿勢をとるコールセンターが増えています。
◎接続品質や応対品質の維持には、チャットボットやFAQといったツールを活用する
◎センター長は、コールセンターのプレゼンス(存在感)を高める役割を担う
例えば、コールセンターに寄せられたお客様の声を積極的に他部署へ共有し、マーケティングや営業活動に生かして利益を生み出せば、コールセンターの存在感を社内外に示せます。コールセンターのプロフィットセンター化が進めば、人材の確保や新たなテクノロジーへの投資も、スムーズに話が進むようになるでしょう。
このように新しい時代のセンター長には、受け身のコールセンターを能動的な組織へと変革する役割が期待されているのです。
プロフィットセンター化について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
マネージャー・スーパーバイザー・リーダーとの仕事内容の違い
先述の通り、センター長とマネージャー・スーパーバイザー・リーダーでは、担当する範囲や視座が異なります。
会社やコールセンターの規模によって体制や役割に違いはありますが、センター長の役目を全うするためにも、各階級における一般的な仕事内容を理解しておきましょう。
センター長の仕事内容
・コールセンター全体の目標設定
・収益管理
・労務管理
・SVなど管理者の育成、評価
・他部門や本部とのやりとり
・重大なインシデントへの対応 など
マネージャーの仕事内容
・センター長の業務のサポート(目標に対する進捗報告や収益管理など)
・SV以下のメンバーの業務改善
・SV以下のメンバーの目標設定と進捗確認
・SVの育成
・インシデントへの対応
・他部門とのやりとり など
スーパーバイザー(SV)の仕事内容
・オペレーターのシフト管理
・オペレーターからの質問対応
・オペレーターの目標設定と進捗確認
・オペレーターの育成
・業務のマニュアル作成
・インシデントへの対応
・営業担当者とのやりとり など
リーダーの仕事内容
・オペレーターの業務のサポート
・オペレーターと同じく顧客応対
・SVとオペレーターの仲介役 など
センター長に求められるスキル
「良いセンター長」に求められるスキルは、主に以下の4点です。
- オペレーションマネジメント能力
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- リーダーシップ
オペレーションマネジメント能力
オペレーションマネジメントとは、戦略に基づいて経営資源を最大限有効に活用し、目標達成を図るマネジメント手法のことです。
現場を回すのはSVやリーダーの役割なので、センター長にはコールセンター全体を中長期的な視点で捉え、収益・品質・環境のバランスがとれた運営状態にすることが求められています。
コミュニケーション能力
センター長には、チームメンバーや他の部門と円滑に意思の疎通や情報共有ができるコミュニケーション能力が必要です。
センター長がコミュニケーション能力(「聞く力」と「伝える力」)を発揮することで、以下のような効果が期待できます。
・風通しが良く心理的安全性の高い職場になり、離職者が減る
・今後の目標や戦略をコールセンター内に浸透させられる
・コールセンターの活動や蓄積された知見を経営層や他部署にも共有し、プレゼンスを高められる
問題解決能力
コールセンター全体の舵取り役であるセンター長には、問題解決能力も欠かせません。
応答率のようなKPIの数値改善を目指すというよりは、俯瞰的なデータ分析によりコールセンターの現状や課題を把握し、戦略的に改善策の立案・実行することが求められています。
また、最新のITや業界動向、顧客ニーズ、経営陣の意向などに精通し、時流に乗った判断を下すことも重要です。
リーダーシップ
組織を率いるセンター長は、リーダーシップをもってメンバーを指導し、モチベートし、育成する必要があります。
大きなコールセンターでは、センター長の配下に数百人のメンバーが配属されることもあります。大勢のメンバーを束ねて成果を出すのは容易ではありませんが、「あの人がいるから頑張れる」と思われるようなセンター長を目指しましょう。
リーダーシップに自信がない場合は、ロールモデルを見つけ、言動を真似るところからはじめるのがお勧めです。
SV以上と接する際に押さえるべきポイント
コールセンターでは、SVになった時点から”管理者の役割”が求められるため、SV以上のメンバーには、すでに人材育成のノウハウやPDCAのサイクルが身についています。
そのため、SVたちは自身の上司への見方や評価がどうしても厳しくなりがちです。他部門から着任したセンター長は、これまでに接してきた部下たちとは異なる”扱いづらさ”を感じるかもしれませんが、それはSVたちが優秀な証として受け止めましょう。
そんなSVたちから信頼を得るには、以下の4点が重要です。
◎現場の声には誠実に耳を傾け、的確な指示を出す
◎マネジメント層とSVのミッションの違いを言語化して伝える
◎面談の際には抽象的な評価は避け、具体的な事例と共にフィードバックする
◎SVの雇用形態や処遇に配慮する
必ずしも、センター長などのマネジメント層が現場業務に精通している必要はありません。それより大切なのは、SVたちと対話を重ねた上で、適切に組織を率いることです。
SVの中にはアルバイトのオペレーターから昇進したため、会社組織について理解が浅い人もいます。日頃からセンター長とSVたちの役割の違いを伝えることで相互理解を図り、協力体制を築きましょう。
まとめ
「良いセンター長」の姿について、具体的にイメージできたでしょうか?
コールセンター全体を統括するセンター長だからこそ、現場の力を信じ、価値を見出し、対外的にアピールする活動を積極的に行いましょう。
コールセンターのプレゼンスが高まれば、
・離職率の低下
・顧客ロイヤルティの向上
・会社の競争力の強化
など、社内外に嬉しい効果が表われるはずです。
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